低血圧~イヌの副腎皮質機能低下症(アジソン病)2015年03月03日

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急に元気がなくなり、ふらついて倒れた6歳のシーズーの女の子。

血圧が低下し、脱水がひどく、立ち上がることができません。除脈もあります。

数週間前から食欲が落ち、多飲多尿だったようです。

緊急入院になり、点滴により血圧を維持します。

 

低血圧になる病気は、電解質異常や低血糖などの内分泌系疾患、出血、脱水、心臓など循環器系の異常、消化器障害や中毒でも起こることがあります

 

レントゲン検査では心臓の大きさが小さめです。血液検査では、貧血はなく、低血糖と電解質の乱れ(ナトリウムが低く、カリウムが高い)があります。

これらの結果から、内分泌系「副腎」の異常が考えられます。

特殊な血液検査(ACTH検査)により副腎皮質機能低下症(アジソン病)と診断。

 

「副腎」は腎臓のそばにある小さな臓器ですが、多くのホルモンの分泌をしている大切な臓器です。アジソン病は、「副腎皮質」と呼ばれる部位からホルモンが十分に分泌されないことで起こります。副腎皮質自体が免疫や腫瘍・薬剤などで破壊されて起こる場合と、副腎皮質に指令を与える視床下部や下垂体に異常があって起こる場合があります長期間や大量のステロイド剤治療を突然やめた場合(医原性)に起こることもあります。

 

今回の仔は副腎皮質自体の機能が低下し、電解質が乱れ、脱水、低血圧を起こし、ショック状態に陥りました。

アジソン病の初期症状は、元気がなくなってきた、多飲多尿、痩せてきたなどですが、見過ごされることもあります。症状の悪化はストレスがかかることで、起こることが多く、気づいた時には重症になっていることがよくあります。また、血液検査で典型的な数値異常が現れないタイプもあり、診断に苦労する場合も少なくありません。

 

急性の場合の治療は、まず、血圧を維持し、脱水を改善させ、電解質の乱れを治すことです。維持には副腎のホルモン剤(ステロイド剤)の幾つかを症状により使い分けます。医原性以外は一生涯治療が必要です。

規則正しい生活とストレスを与えない環境が一番です。

 

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