アルヒ動物病院は、札幌の動物病院です。イヌ・ネコ・ハムスター・ウサギ・フェレット・他小動物の診療をおこなっております。
骨格筋を動かすには神経から筋肉へ神経伝達物質のアセチルコリンが放出され、脳からの指令が筋肉へ伝わることが必要です。
重症筋無力症は、生まれつき筋肉の表面にあるアセチルコリンを受け取る受容体(アセチルコリンレセプター)の数が少ない先天性と、アセチルコリンと受容体の結合をブロックする抗体が作られる後天性があり、どちらも脳からの指令が伝わらず筋肉が十分に動かせなくなって、筋力の低下が起こります。
先天性はほとんどの場合生後3~9週齢ほどで発症します。
後天性では胸腺腫や骨肉腫など腫瘍に伴う疾患として発症することがあります。
症状
全身型は四肢の筋力が低下することで、運動をするとすぐに疲れるようになり、次第に座り込むようになります。進行すると歩行が困難になってきます。
全身型の場合はこういった症状に加え、食べた直後の吐出や嚥下困難になる巨大食道症も併発することがほとんどです。
急激に進行すると、頭を持ちあげられず、肢の筋力低下による起立不能、重度の巨大食道症による誤嚥性肺炎や呼吸筋の麻痺による呼吸困難を起こし、死に至ることがよくあります。
重症筋無力症では多発性筋炎、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症など他の免疫異常を併発していることがあります。
局所型は巨大食道症のみの発症や、顔面などに症状が現れ歩行障害の症状はありません。
しかし、初期には局所型でも次第に全身型に移行していくこともあります。
診断
血液検査によるアセチルコリンレセプターの抗体検出や、テンシロンテストによる症状の変化などで診断されます。
テンシロンテストとは、重症筋無力症の治療薬と同じ働きをする短時間作用型の薬を注射し、筋力の改善効果をみます。
治療
コリエンステラーゼ阻害薬を投与します。
アセチルコリンを分解する酵素を阻害し、筋肉でのアセチルコリンと結合する受容体の割合を増やします。
症状に応じて免疫抑制剤を使います。